■魚を飼う事って
    魚の飼育は、一般のペットとかなり異なった所があります。
    それは、どちらかというと「環境を飼う」という言い方に近い物があります。
    水槽を状態良く保つと魚達も元気良く暮らしてくれる。
    
    良く世話された水槽は、手の掛かった庭のように美しく、見るものをリラックス
    させてくれます。盆栽とかガーデニングみたいなものでしょうか。
    さらに、この中には「動き」があります。きらきらちょこちょこと動き回る
    魚達のユーモラスな動きは、見ていて飽きません。
    そして光に照らされた緑と流れる水の音は何故か心をゆったりさせてくれるものです。
    
    美しく育て上げる事、繁殖させること、綺麗にレイアウトすること…一所懸命手を
    入れるとそれなりの手応えが返ってきます。一方、多少いい加減に世話された(^_^;)
    水槽でも、それなりに楽しい事がいっぱいあります。
    
    ちょっと　えころじぃ　で　りらくぜーしょん　で　ひーりんぐ　な
    趣味だったりするわけです。



■「とりあえず飼い」のススメ
    ここでお勧めする「とりあえず飼い」とは、
    「小さな安い設備で小さな安い魚を飼い、ちょこちょこ様子を見てなごむ」
    そうした飼い方の事です。
    
    高級な機材を使用することで技術力が足りなくても失敗を減らす事ができますが、
    どんないい機材を使ってもトラブルは起きます。
    それだけの金とヒマをつぎ込むに足る趣味か、それを見極めてからでも導入は
    遅くないです。
    魚は良く死に、良く殖えます。病気になったらまず助からないし、魚同志平気で
    食い合います。親が生まれた直後の子をもりもり喰ったりしますから、死に対して
    少し割り切って考えないと飼っていくのがつらくなるかも知れません。
    
    趣味全般に言えることですが、大上段に構えて最初から本格的にやると、色々と
    息切れしてくるものです。なので、うちでは最初はちょっと手を付けてみて、
    その後少しずつステップアップしていくスタイルを紹介したいと思います。
    ま、自分自身も夜店の金魚から入った人間なので、ちょっとずつステップアップ
    してきたのであります。
    
    

■魚について
    まず、魚はどういう生き物かと言うことを簡単に考えてみましょう。
    魚とはこうした生き物です。
    
    
    ・水中の生き物である
    まずこれは常に頭の中に置いておかなければいけません。鳥やほ乳類などの
    ペットが、ケージに隔てられているとはいえ同じ環境の元で生きているのに
    対し、魚は飼育者が用意してあげた水槽の中でしか生きることはできません。
    魚は住み難いからといって引っ越すことはできないのです。
    周囲の環境が合わない時、彼らはまず居心地悪そうにし、次いで調子を崩して
    病気になり、最後に死んでしまいます。
    そうならないようにできるのは、飼い主だけです。
    つまり、飼う人が彼らの生殺与奪を100%握っているのです。
    
    ・飢えに結構強い生き物である
    彼らは一般に非常に飢えに強い生き物です。自らのエネルギーで体温を維持
    せず、普段から水中に浮いている彼らは極めて燃費の良い生き物と言えます。
    卵を口に含んで数週間絶食して守り続ける魚もいます。
    成長の止まった成魚であれば、１週間の絶食程度は平然としている事でしょう。
    むしろ、餌のやり過ぎによる脂肪過多や水質悪化に注意する必要があります。
    
    ・自分以外はすべて餌
    水草も他の魚も、自分の産んだ子供すらも、彼らにとっては餌なのです。
    例えば共食いであるとか（エンゼルとネオンテトラを飼っていたら、ふと
    気づくとエンゼルだけになっていたとか）、「いつのまにかいなくなった」と
    いう事象は、熱帯魚をやっていれば結構普通に起きます。
    大型魚に金魚を餌として与えたりすることも普通にあります。
    プラティが「あ、稚魚を産んだ！」と思った５分後、その親が稚魚を食う
    瞬間を目撃することもあります。
    結構生と死を日常的によく見かける趣味なので、死を冷静に見つめられない
    タイプの方は他の趣味にした方がいいです。
    
    ・体調に「溜め」の効く生き物である
    彼らは元気を溜めておくことができる生き物です。同じ種類の魚でも、普段
    から状態良く飼われていた魚といい加減に飼われていた魚では、環境の急変
    などへの耐久力が全く違います。
    買うときに調子のいい魚を選ぶこと、常に状態良く飼って余力を残してやる
    事が、もしもの時の保険になります。
    
    ・鋭敏な生き物である
    例えばは虫類などにくらべ、かなり鋭い感覚を持っています。眼と鼻の良い
    生き物で、飼い主の顔や餌入れの形を覚えたりしますし、ごく微量の餌の臭いも
    遠くから嗅ぎつけることができます。
    また、振動を全身で感じとる事ができますので、耳の良い生き物とも言えます。
    
    ・ストレスに弱い
    そしてその裏返しとして、ストレスに弱い生き物です。振動や光、水質の不適、
    環境の悪化や急変、そして同居の魚との折り合いなどのストレスにより体調を
    崩してしまいます。
    目の良い生き物である彼らは水槽のサイズをも感じることで、広々とした
    水槽で育ったものとそうでないものとでは躰のサイズにすら違いが出てきて
    しまいます。
    
    ・寿命はさまざま
    １年で死んでしまう魚から１０年は生きるナマズ達、数十年生きる大型の鯉
    など、寿命は様々です。大事に飼えば何年もおつきあいできる仲間です。
    
    

■魚を飼う前に
    …というか、生き物を飼う前に、って話なのですが。
    やはり、飼う前にいくつかの覚悟が必要です。
    最たるものは「死は平等に訪れる」と言うことを認識することでしょうか。
    たとえば、小魚を飼っていて、アロワナが金魚を食う瞬間を見たが故に大型魚を
    嫌う方々。…ペット飼わない方が良いと思います。
    
    大切なのは、より良い生を送らせることができたか？の一点に尽きます。
    生を全うしたものは、悼む気持ちとは別個に、それはすでに「もの」でしか
    ないと言うことを心に刻む必要があるでしょう。
    飼い始めの頃は墓を作っていたけれど、掘った場所から前の魚の死体が出てきた
    日には、やっぱり考えちゃうじゃないですか。
    私は、死んだ魚に関しては、水質が思い切り悪化しない限り、魚葬にしてます。
    魚が喰う以上、「今いる」魚の栄養になるし、捨てたり埋めたりするより、
    今そこで生きている連中のためになると考えるからです。
    
    そこいら辺、宗教とかじゃなくて、自分の「生と向き合う心」みたいなものを
    持ってからの方がいいんじゃないかと思います。
    …な〜んて、飲み屋で小エビの唐揚げとか見ながら考えちゃう訳ですよ。
    
    

■気を付けること
    熱帯魚飼育者として、最低限飼育者として気を付けなくてはいけない事について書きます。
    偉そうですが、これだけはやはり心に留めて置いていただきたい。お願い。
    
    生き物の命は粗末にするな！
    全ての基本。自分のできる範囲で手をかけてあげること。
    ここで云う「粗末にするな」というのは「解っていたこと／できる事をやらなかった」と
    いうことです。生きていて欲しいものを飼い主の怠慢で死に至らせることです。
    系統維持作業の結果、はねたものを飼育者責任で死に至らしめることではないです。
    もちろん、魚食魚に生きた小魚を餌として与えることでもありません。
    
    飼いきれない魚は飼ってはいけない
    一目惚れみたいなことがあります。「あの魚が僕に「飼って」って云ってるんだ」
    みたいな。でもちょっと待って欲しいのです。
    その前に、大体の性質を知って置いて欲しいのです。どれくらい大きくなるか、
    何を食べるか、混泳は大丈夫か、特殊な水質が必要じゃないのか…
    特に大きさの面で飼いきれない魚は、ぐっとこらえましょう。
    そこら辺を考えずに「かったけど１週間で死んじゃったさ…ま、安いし、次行こ次」
    の連続では、「買った」だけで「飼った」とは言えないのであります。
    
    いつでも観察
    とてつもなく忙しい日で、ホントは水換えする日だったのに、そのまま寝ちゃった…
    ま、そんなことはあります。でもですね、見る為に、一緒に暮らす為に飼っている
    魚なのです。
    ちょっと暇があったら、水槽の様子を見ましょう！
    今まで知らなかった彼らの新しい仕草が見られるはずです。それだけでなく、観察が
    異変を知る第一歩なのです。より良く飼う為にはまず観察。
    
    失敗は次に生かす
    「飛び出しで殺しちゃった」とか云いながらいっこうにふたをしない人。
    「喧嘩するんだよねぇ」とか云いながら一緒に飼い続ける人。懲りない人たちです。
    最初の失敗は誰にでもあることです。その失敗を次に活かしましょう。
    
    気負わない
    義務にしないと言うことです。趣味は楽しくやって満足するためのものです。義務とか
    苦痛にしてしまってはいけません。そのためにも必要な知識は早めに身につけて、
    自分が飼える範囲の魚を、自分が飼える範囲で飼う、そんな自分のスタイルを作って
    しまいましょう。
    
    人に迷惑を掛けない
    これはなかなか痛しかゆしな話ですが。ま、ペット放し飼い禁止の公園で堂々とペットを
    放し、他人に攻撃して相手は本気で怖がっているのに「じゃれついてるだけよ。貴方は
    動物を愛する心を持たないのかい」などとのたまうオバカではいかんということです。
    飼い始めれば１匹がすぐに３桁４桁になりますが、飼い切れなければ自らの手で引導を
    渡すというのも大事な飼い主の責任というかライトスタッフであります。
    
    必要経費はケチらない
    節約は結構ですが、冬場の電気代、餌代、大きな魚を飼うときの場所、特殊な飼育が
    必要な魚を飼うときの設備、急場の手間…などのコストは必要経費です。
    ケチって殺しちゃ元も子もありませんので、そう言うところはケチらないように。
    いくら金のないのを手間で補う「取りあえず飼い」でもそれなりのコストは必要です。
    逆に言えば、その手間が用意できなければ飼わない事です。
    
    

■おいらについて
    えらそうなこと書いてるお前はいったいナニモノよというところについて。
    またはこのページのスタンスについて。
    
    おいら自身は特に何の専門知識もない素人でして、誰に勧められるともなく熱帯魚を
    飼い始めました。いっぱい失敗して、色々やってみて、「ああ、これが解ってれば
    もう少し楽に飼えたなぁ…」と言うことをまとめてみたのがココです。
    
    本に書いてあること、niftyのfaquaフォーラム、色々なwebページ、そして同じ魚を
    飼う仲間達との色々な話から少しずつ手に入れたノウハウを自分なりに再構築したのが
    このページの内容です。なので、当然他のページとは違ったことが書いてあります。
    それは、おいらが正しい または やむを得ない と思っていることで、これを読まれた
    方の環境や状況には当てはまらないかと思います。
    この中に書いてあることも鵜呑みにせず、自分で考え、工夫するのが一番大切です。
    そうして、自分なりの飼い方、つきあい方を作って行ってください。
    そういった自分でやっていくことがホビー、趣味の一番の楽しさだと思います。
    
    　　　　あなたのアクアライフが楽しく豊かなものになると良いですね。
   


   

    	 
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